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コーポレートガバナンス&役員責任

トルコ株式会社における取締役の民事賠償責任:差異化された連帯責任(TTK557条)、注意義務と権限委任の限界

1. 取締役の責任の法的根拠:トルコ商法典553条

トルコ商法典(法律第6102号/TTK)553条は、株式会社(Anonim Şirket/A.Ş.)の取締役、業務執行者および清算人が、法令または定款に基づく義務に過失により違反した場合に、会社、株主および会社債権者に対して個人として損害賠償責任を負うことを定めた基本規定です。責任の主体は会社ではなく、義務に違反した個人です。

トルコ法における役員責任は過失責任(kusur sorumluluğu)であり、結果責任ではありません。責任が成立するためには、(1)法令または定款上の義務に違反する作為または不作為、(2)会社・株主・債権者に現実に生じた損害、(3)義務違反と損害との間の相当因果関係(illiyet bağı)、(4)当該取締役に帰属する過失(故意または過失)という四つの要件がすべて満たされる必要があります。一つでも欠ければ請求は成り立ちません。義務違反と過失の存在は、主張する側が立証しなければなりません。

責任の淵源は、369条が定める注意義務および忠実義務にあります。取締役は思慮ある経営者の注意をもって職務を遂行し、個人的な利害や派遣元グループの都合よりも会社の利益を優先することが求められます。

責任主体は登記された取締役に限られません。条文は業務執行者(yöneticiler)および清算人を並列して掲げているため、実際に経営機能を担う者も同条の射程に入ります。日本の親会社にとっては、トルコ子会社に派遣した管理職が取締役として登記されていなくとも、その実質的機能ゆえに同一の責任を負い得ることを意味します。責任の所在は、肩書ではなく実際の権限と社内の情報の流れによって決まります。

過失の判断基準は客観的です。「事業経験が乏しかった」「トルコの法令に不慣れであった」といった主観的事情は、ガバナンス上の懈怠に対する抗弁にはなりません。もっとも、トルコの裁判実務において形成されつつある経営判断の原則(Business Judgment Rule)の下では、誠実に、十分な情報に基づき、利益相反のない状態でなされた合理的な経営判断について、裁判所がその当否を事後的に判断し直すことはありません。結果として会社に損失が生じたという一事をもって責任が生じるわけではないということです。

557条の差異化された連帯責任の下で、裁判所は各取締役の帰責性を個別に分解して評価しなければなりません。研究開発を担当する非業務執行取締役が、財務担当役員によって専断的に行われた精緻な粉飾決算について当然に連帯責任を負うわけではありません。合理的な監督を行い、通常の取締役会に出席していた限りにおいて、そうです。

555条は、損害が間接的である場合、すなわち会社財産が毀損された結果として株式価値が下落する類型について、訴権が会社および各株主に属すると定めます。ただし賠償金は原告個人ではなく会社の勘定に支払われます。会社が破産した場合には、破産財団が債権者全体の利益のために第一次的な訴権を持ちます。

553条2項は、次章で扱う委任の問題への橋渡しとなる規定です。法律または定款上の職務・権限を法に基づき他者に委任した機関または個人は、受任者の選任について相当な注意を尽くさなかったことが証明された場合を除き、受任者の行為および決定について責任を負いません。この一文が、トルコにおける取締役責任の配分の第一の境界線を形成しています。

トルコ商法典553条に基づく取締役の民事責任とコーポレートガバナンス訴訟
トルコ取締役責任法制:商法第553条および第557条は、過失責任および差異化された連帯責任の原則に基づき役員の民事責任を規律します。

2. 差異化された連帯責任:557条

557条は、旧法下の硬直的な連帯責任を廃し、各取締役が損害のうち自己に個人的に帰責され得る部分についてのみ責任を負うという差異化された連帯責任(Farklılaştırılmış Teselsül)を導入しました。トルコ会社法における最も実務的な改正の一つです。

557条1項の定めは次のとおりです。「複数の者が同一の損害を賠償する義務を負う場合、各人は、自己の過失および事情の必要に応じ、損害が自己に個人的に帰責され得る限度において、他の者と連帯して責任を負う。」

この規定は、訴訟戦略に二つの帰結をもたらします。

  • 帰責性の個別評価。裁判所は、各取締役の担当領域、社内における権限委任の状況、取締役会への出席状況、署名権限を検討したうえで、各人が負うべき金額を確定します。取締役会の構成員であるという一事から責任額が導かれることはありません。
  • 内部求償。自己の負担部分を超えて支払った取締役は、他の責任者に対して求償することができます。ただし557条3項により、その配分は一切の事情を考慮した裁判所の裁量に委ねられています。頭割りその他の固定割合による求償が当然に認められるわけではありません。

2項は原告に手続上の選択を与えます。原告は損害全額について複数の責任者を共同で訴え、同一の訴訟において各被告の賠償債務を裁判所が個別に確定するよう求めることができます。

実務上の重心は、ここで大きく移動します。争点は「損害が生じたか」ではなく「その損害がどの程度この取締役に帰責され得るか」となります。したがって、議事録上の反対意見、職務分掌の定め、当該取締役に情報が実際に届いていたことを示す記録が、責任額を左右する中心的な証拠になります。

旧法の硬直的連帯と557条の差異化された連帯責任の比較
比較項目硬直的連帯(旧制度)差異化された連帯(557条)
責任の範囲各責任者が損害全額を負担自己に帰責され得る限度のみ
個別の過失区別しない過失と事情に応じ個別に評価
裁判の方式一律に判断同一訴訟で各被告の債務を個別確定(2項)
抗弁の重点損害の有無損害がどの程度自己に帰責されるか
内部求償均等割合を推定裁判所が一切の事情を考慮して決定(3項)
重要な証拠会社全体の決議議事録上の反対意見、職務範囲、情報伝達記録

3. 業務執行の委任と内部規程:367条・553条2項

トルコ法は、367条に基づく内部規程(iç yönerge)によって業務執行権限を正式に委任することを認めており、有効な委任は非業務執行取締役を日常業務の責任から切り離します。多国籍グループのトルコ子会社において取締役全員が日常業務を監視することは商業的に現実的ではなく、この規定はその現実に対応するものです。

業務執行が有効に業務執行取締役または支配人へ委任された場合、委任した取締役は当該業務執行者の作為および不作為について法律上責任を負いません(553条2項)。ただし、次の三つの要件が厳格に満たされることが前提となります。

  1. 定款上の授権。定款に業務執行の委任を明示的に認める条項が置かれていなければなりません。
  2. 内部規程の制定。取締役会は、業務執行の範囲を具体的に定める内部規程を制定・発出する必要があります。内部規程それ自体は商業登記所に登記されません。登記されるのは、会社を代表する権限を有する者を指名する取締役会決議です(373条)。
  3. 選任における相当の注意(cura in eligendo)。553条2項の下では、委任した取締役は受任者の行為について責任を負いません。責任が生じるのは、その者の選任にあたって相当の注意を尽くさなかったことが証明された場合に限られます。条文は判断の対象を選任の一点に限定し、その立証責任を請求者側に置いています。553条3項がこれを補強します。すなわち、自己の支配の及ばない事項についての免責は、監督義務を援用することによって覆すことはできません。

委任の法的根拠は367条です。委任は取締役会決議のみでは成立しません。定款に授権条項が置かれ、取締役会がこれに基づき内部規程を制定する必要があります。1項はその内容を明示します——会社の業務執行を組織し、そのために必要な職務を定義し、その位置を示し、とくに誰が誰に従属し、誰が誰に情報を提供する義務を負うかを定めることです。

ここから二つの帰結が生じます。第一に、2項により委任がなされていない場合、業務執行は取締役全員に帰属します。委任手続に瑕疵があれば、取締役会全体が再び責任にさらされることになります。第二に、取締役会は請求に応じ、株主および保護に値する利益を説得的に示した債権者に対し、内部規程について書面で通知しなければなりません。文書化されたことのない委任は、後日の責任争訟において援用が困難です。

日本の親会社の法務部にとって、この構造から導かれる確認事項は明確です。トルコ子会社の定款ひな型に授権条項が入っているか、内部規程が実際に一個の文書として存在するか、そこに報告経路が書き込まれているか——この三点は、取締役を送り出す前の段階で確認しておくべき事項です。委任が形式を欠いていれば、367条2項により業務執行は取締役全員に帰属し、553条2項の免責はそもそも働きません。

トルコ商法典367条に基づく内部規程による業務執行の委任と取締役の免責
商法第367条に基づく業務委任と内部規程:定款の授権条項に基づいて制定された内部規程は、非業務執行取締役を日常業務の過失責任から切り離します。

4. 直接損害と間接損害:誰が訴えを提起できるか(555条・556条)

トルコ会社法は、取締役の行為によって生じた損害を直接損害と間接損害に区別し、訴権を有する者と賠償金の帰属先をそれぞれ別に定めています。この区別を誤ると、請求そのものが成り立ちません。

直接損害と間接損害:訴権と賠償の帰属先
区分損害の性質訴権を有する者賠償金の帰属先
直接損害(Doğrudan Zarar)会社財産とは独立に、株主または債権者の個人財産に直接生じた損害(たとえば財務資料の記載が事実と異なることによって生じた損害)。損害を受けた株主または会社債権者原告本人に支払われる
間接損害(Dolaylı Zarar)会社自身に生じた損害(会社財産の減少)により、株式価値の下落や債権の回収不能が結果として生じる類型。会社、各株主(555条)、破産管財人会社の勘定にのみ支払われる

555条1項の規定は精確です。会社が被った損害の賠償は、会社および各株主が請求できます。ただし株主は、賠償を会社に対して支払うことのみを請求でき、自己への支払を求めることはできません。これが二種類の請求を分ける実務上の基準であり、外国株主が請求の名宛人を誤りやすい箇所です。

2項は、少数株主の行動を思いとどまらせる費用リスクに対処します。株主の訴えが法律上および事実上正当と認められる場合、被告に負担させられない範囲の訴訟費用および弁護士報酬を、裁判所は原告株主と会社との間で衡平に従い分配します。

会社債権者については、独立の訴権が認められるのは会社が破産した場合に限られます(556条)。それまでの間、債権者の利益は、会社財産が回復されることを通じて間接的に保護されるにとどまります。

日本の親会社やファンドが株主として提訴を検討する際、実際に評価すべきは自らが直接受け取る金額ではありません。会社財産が回復することによって持分価値がどれだけ戻るか、そして破産手続に入った場合に訴権が誰の手に移るか——この二点が判断材料になります。同一の事実が株主個人に対する直接損害(たとえば開示された情報が事実と異なったことによる出資判断上の損失)をも生じさせている場合、その部分の請求は会社の損害に関する請求とは法律上別個のものであり、別に主張し別に立証する必要があります。

5. 支配範囲外の事項:553条3項

553条3項は次のように定めます。「何人も、自己の支配の及ばない法律違反、定款違反または不正行為について責任を負わされることはなく、この免責は、一般的な監督義務および注意義務を援用することによって無効とされることはない。」

この規定は、海外の持株会社から派遣された役員および独立非業務執行取締役にとって、実務上きわめて重要な保護です。従業員間の巧妙な共謀によって隠蔽され、当該取締役の監督の射程外にあった不正や横領について、裁判所は一般的な受託者的監督義務を口実に無過失責任を課すことはできません。後段の意義は大きく、「監督不十分」という包括的な理由によって責任を取締役全員に及ぼす手法を封じています。

したがって立証の焦点は、当該事項が実際にその取締役の支配範囲外にあったか、そして社内の情報の流れが当該取締役に知り得る状態を作出していたかに移ります。367条1項が要求する報告経路の定めは、まさにこの点について最も証明力を持つ資料となります。委任の設計が、そのまま防御の設計になっているということです。

6. 株主総会の免責決議(İbra)の効力と時効:558条・560条

株主総会の免責決議(İbra)は、当該事業年度について株主総会に開示された取引に関する限り、取締役を民事責任から解放します。決議に賛成しなかった株主は、免責の日から6か月以内に責任追及の訴えを提起しなければなりません(558条2項)。

558条は免責決議の限界を異例の精確さで画しています。1項により、免責決議は後の株主総会の決議によって撤回することができません。2項により、免責は会社、賛成票を投じた株主、および決議を知って株式を取得した者の訴権を消滅させますが、それは免責が対象とする開示された具体的事実に関してのみです。株主総会に開示されなかった事項は免責の範囲に含まれません。免責決議の実際の価値は、何が株主総会に提出されたかによって決まります。

その他の株主については、効果は訴権の消滅ではなく短期の期間です。すなわち訴権は免責の日から六か月の経過により消滅します。

時効(560条)については、二つの期間が並行して進行します。

  • 原則の時効。請求権は、原告が損害および責任者を知った日から2年、いかなる場合も加害行為の日から5年で時効にかかります。
  • 刑事時効による延長。取締役の行為がトルコ刑法上の犯罪(たとえば加重詐欺=トルコ刑法158条、信任の濫用=同155条)を構成する場合には、より長い刑事上の公訴時効(8年から15年)が民事の賠償請求にも適用されます。

日本の親会社にとって実務上の含意は明確です。免責決議は「もらえば安心」というものではなく、何が開示されたかによってその射程が定まります。取締役会に提出した資料と株主総会に提出した資料の範囲を年度ごとに記録しておくことが、後日の免責の効力を支える基礎になります。

7. 外国投資家および取締役のための実務対応

トルコの株式会社で取締役の地位にある者の防御は、紛争が起きた後の主張よりも、就任時と平時に積み上げた記録に大きく依存します。トルコの企業組織で職務を担う外国人取締役および国内取締役について、次のガバナンス上の措置が考えられます。

  1. 内部規程を整備する。367条に基づき、業務執行機能と監督機能を明確に分離する形に取締役会の運営を組み替えます。
  2. 反対意見を記録する(muhalefet şerhi)。争点となる決議については、法的理由を付した書面の反対意見を取締役会議事録(karar defteri)に正式に記載させます。
  3. D&O保険を検討する。取締役が過失により会社に与えた損害を対象とする保険の付保を検討します。ここで361条の位置づけを正確に押さえておく必要があります。同条は付保を義務づける規定ではなく、開示規定です。上場会社が当該リスクを資本金の25%を超える額で付保した場合、その事実が資本市場委員会(SPK)の公報で公表され、コーポレートガバナンス遵守評価において考慮されます。
  4. 独立した法務監査を制度化する。四半期ごとのコンプライアンス・レビューを行い、主要な商取引について検証可能な監査証跡を保持します。

上記の条文から直接導かれる実務上の措置は次のとおりです。

  • 委任に依拠する前に定款条項を確認する。定款の授権条項と書面の内部規程を欠く場合、367条2項により業務執行は取締役全員に帰属します。
  • 反対意見を議事録に記載する。557条は個人の過失に応じて責任を配分するため、記録された異議が過失不存在の第一の証拠となります。
  • 免責決議が十分な開示に基づくことを確保する。558条2項により免責は開示された事項のみを対象とします。
  • 二つの時効を並行して管理する。560条の下で、知った時から二年と行為時から五年が同時に進行します。
  • 情報の流れを立証可能にしておく。367条1項は内部規程が従属関係と報告経路を定めることを要求しています。この経路が、後日どの取締役が知り得たか、知り得なかったかを示す資料になります。

最後に時間の要素です。558条2項が賛成票を投じなかった株主に定める期間は六か月と短く、560条の二年および五年の時効と並行して進行します。日本の親会社の場合、トルコ国内の株主総会決議、免責決議および取締役会議事録は、日本国内で検討するために翻訳と認証を要することが通常であり、この手続時間だけで六か月の相当部分を費消しかねません。取締役責任の問題を察知した時点で、日本語訳の到着を待たずに重要な期日の確認に着手すべきです。

なお当事務所の法的サービスは英語およびトルコ語で提供しています。日本語でのやり取りは、費用のご負担をいただいたうえで通訳を介した連絡対応として承ります。

よくあるご質問

非業務執行取締役は、日常業務上の不履行について責任を負いますか。

原則として負いません。TTK557条(差異化された連帯責任)およびTTK553条3項の下では、取締役は自己の支配範囲内にある事項について、自己の過失に応じた限度でのみ責任を負います。内部規程によって業務執行権限が委任されている場合には、とくにそうです。

トルコ法にいう「差異化された連帯責任」とは何を意味しますか。

連帯責任が絶対的なものではない、という意味です。各取締役が支払う賠償額は、自己の具体的な過失と事情に照らして自己に個人的に帰責され得る範囲に限られます。

内部規程(TTK367条)は取締役をどのように保護しますか。

業務執行の職務を業務執行者へ正式に委任することにより、取締役はその者の行為について責任を負わなくなります。責任が残るのは、その者の選任にあたって相当の注意を尽くさなかったことが証明された場合に限られ、その立証責任は請求する側にあります(TTK553条2項)。

株主総会の免責決議(ibra)はすべての責任を消滅させますか。

いいえ。消滅するのは、株主総会に開示された取引について、会社および賛成票を投じた株主が有する請求権です。賛成しなかった株主は6か月以内に責任追及の訴えを提起することができ、会社債権者は自己の直接損害について訴えることができます。

トルコにおける取締役責任の請求権の時効は何年ですか。

損害および責任者を知った日から2年、いかなる場合も加害行為の日から5年で時効にかかります。当該行為が犯罪を構成する場合には、より長い刑事上の時効(8年から15年)が民事請求にも適用されます。

賛成しなかった取締役会決議について、取締役はどのように責任を免れることができますか。

反対票を投じたうえで、法的理由を付した書面の反対意見(muhalefet şerhi)を取締役会議事録に記載させ、署名のうえ保管されるようにする必要があります。

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